Weingut Müller-Ruprecht

2024年8月15日(木)
ラインガウからアウトバーンをひたすら南下。2019年以来のプファルツ、心が躍る。緩やかな起伏が続く「千の丘陵地」と呼ばれるラインヘッセンを通り過ぎ、国道271号線のドイツワイン街道に入る。いや、広々としたプファルツの景色、懐かしい。暫くすると、目的のWeingut Müller-Ruprechtがあるカルシュタットの街に入る。綺麗な街並み。バロック様式の高い塔が目を引く教会の横を通り過ぎ、ワイン街道を左折。フラインスハイマー通りに入ると、程なく”Weingut Müller-Ruprecht”の文字が輝く綺麗な看板を掲げた白い建物が目に入った。ここここと、車を敷地に滑り込ませる。鉢植えの植物や建物の壁を這う蔦の葉の緑が心地良い。車を降りると、長めの髪の毛がカッコいい男性が出迎えてくれた。「ようこそ。待ってたよ」お約束をした、先代のUlrich Müllerさんだ。

Weingut Müller-Ruprechtは1702年創業。実に、300年以上もの長きに渡り家族経営でワインの生産に携わってきた。Ulrichさんと奥様のJuttaさんは、この伝統を引き継ぐとともに、自然な栽培にこだわり、長年に渡る有機農法の実践と新しい醸造技術の導入でワインの品質を高めてきた。Ulrichさんは、赤ワインの醸造にも精力的に取り組み、シュペートブルグンダーに加え、メルローやカベルネ・ソーヴィニオンの栽培も始めた。そして2019年、ブドウ栽培やワイン醸造の教育を受けた娘さんのSabineさんが、このワイナリーを引き継いだ。その際、ご主人のPhilipp Wöhrwagさんがケラーマイスターに就任。Philippさんもワイン一家の出身で、実家のWeingut Wöhrwagでケラーマイスターを務めるなど経験豊富。そして今では、SabineさんとPhilippさんは共同で当主とケラーマイスターを務めている。まさに二人三脚体制だ。

Ulrichさんに案内され奥の建物に入ると、そこは白い壁に明るい色合いの木製の調度品が設えられたヴィノテーク。モダンな雰囲気にクラシックなテイストが溶け込んだ、明るい空間だ。カウンターとテーブルがあり、Ulrichさんはテーブルに案内してくれた。
ワインリストを見ると、白ワインも赤ワインも様々なブドウ種のものがあり、目移りしてしまう。が、やはりここはリースリングをしっかり頂こうと、まずはベーシックなリースリングのトロッケンをお願いした。
うん、柑橘系の良い香り。白い花の香りに酵母のニュアンス。フレッシュでフルーティーな味わい。「グーツワインも手摘みでしっかり造っているからね」とUlrichさん。ところで、このワインのラベル、若い女の子の油絵風のイラストになっている。「これ、面白いね」と言うと、「はは、若い人はこれが好きなんだよ。娘たちが採用したんだ」とのこと。

「次はこちらをどうぞ。畑はカルシュタッター・ザウマーゲン。レスレームと石灰質粘土の土壌で、ここは比較的粘土が少ない土壌なんだ」うん、これも柑橘系の良い香り。アプリコット、リンゴの香り。凝縮感のある果実味に力強さを感じる。美味しい。そしてUlrichさんは別のワインを注いでくれる。「これはカルシュタッター・クライドケラーのリースリング。こちらの土壌は石灰質が多いんだ。また、ザウマーゲンに比べると土が多いんだよ」柑橘系の良い香り。あくまでもドライな凝縮した果実味がフルーティー。そして、これはより酸が強い。そしてミネラル感もより強く感じる。いや、土壌の違いが良く現れている。

「次はちょっと良いやつを。ザウマーゲンのワインだけど、南の方のホルンという区画のブドウなんだ。トノー(500リットルの木ダル)で2年間熟成しているんだよ」おー、濃い目のイエロー。柑橘系の香りは熟した感じがある。アプリコット、桃、パイナップルの香り。レモンの皮。ハーブの香り。凝縮した果実味がとてもジューシー。活き活きとした酸味がとてもよく調和している。穏やかな苦味にミネラル感。いや、美味しい。「これも是非飲んでもらいたいんだけど、同じザウマーゲンのニルという区画のワインだよ。これは北の方にあり、また違う味わいになっているよ」あー、これも熟した柑橘系の良い香り。アプリコット、桃の香り。レモンの皮。スパイスのニュアンス。石灰、貝殻の香り。口に含むと、凝縮感のある力強い果実味。そしてシャープな酸。穏やかな苦味とミネラル感。ホルンとは全く違う味わい。一言で言えば、豊かなホルンとシャープでミネラリックなニルという感じ。いや、面白い。

ひととおりリースリングのトロッケンをいただいたので、グラウブルグンダーのトロッケンをお願いした。レモン、グレープフルーツといった柑橘系の良い香り。梨、リンゴ。フレッシュでジューシー。グラウブルグンダー特有の苦味が良い感じ。程よい酸にミネラル感。美味しい。そしてヴァイスブルグンダーのトロッケン。あー、これ華やかな香り。白い花の香りが立っている。グレープフルーツ、アプリコット、桃の香り。凝縮された果実味がフレッシュ。穏やかな酸。とっても口当たりが良く飲みやすい。ドイツを回っていると、ヴァイスブルグンダー好きが多いような気がするが、それはこの華やかな香りと飲みやすさのためだと思う。このワイナリーのヴァイスブルグンダーは、このブドウ品種の良さを引き出すとともに、味わいに豊かさというか深みも感じる。

ところで、このワインのラベルも、例の油絵風のポップなイラスト。「このイラストはね、あとピノノワールのロゼにも採用しているんだよ」と、Ulrichさんはロゼのボトルも見せてくれた。最近、世界的に若者のアルコール離れが進んでいるが、こんなにも美味しいワイン、このラベルで少しでも多くの若者が手に取ってくれると嬉しいのだが。
「あと、これも飲んでみて」とUlrichさんが注いでくれたのは、ジルバナーのトロッケン。あー、これ果実の良い香り。柑橘系にリンゴ。スパイス、木のニュアンス。柔らかな口当たり。凝縮した果実味に柔らかな酸。まろやかで優しい味わい。「これはザウマーゲンのぶどうだよ。トノーで熟成させているんだ」なるほど。このまろやかさはブドウの種類もあるが、タルでの熟成に由来しているのだなと思う。
「さっきザウマーゲンのホルンのワインを飲んだよね。リストにはないけど、少し古いやつも飲んでみない?」とUlrichさん。おー、それはありがたい。是非是非とお願いする。持ってきてくれたのは、2018年のワイン。さっき頂いたのが2022年のものだったので、さらに4年間瓶内熟成されたものだ。Ulrichさんがグラスに注いでくれる。おー、色が濃い。濃いイエロー。香りも強い。熟した柑橘系の香り。アプリコットや桃の香り。ミントの香り。そしてペトロール香。まろやかな口当たり。ジューシーな果実味も熟した感があり、まろやかで深みを感じる。一方ではフレッシュさも感じられ、長期熟成に耐えられるしっかりとしたワインであることが分かる。いや、美味しい。

「折角なので、赤ワインも試さない?」とUlrichさん。注いでくれたのはメルローのレゼルヴ。うん、力強い果実の香り。ブラックチェリーにブラックベリー。そして木の香り。口に含むと滑らかな舌触り。シンプルな果実味がジューシー。程よいタンニンがコクを与えている。全体として、とてもバランスが良い。深みも感じられ、とっても美味しい。
いや、飲んだ飲んだ。Ulrichさんのおかげで、ヴァラエティに富むこのワイナリーのラインナップの一端を知ることができた。特に、それぞれのワインのテロワールによる違いがとても良く表現されていることに感銘を受けた。細心の注意を払い有機農法により育てられるブドウと、そこから最良のものを取り出す醸造の技術が素晴らしいのだと思う。SabineさんとPhilippさんの二人三脚体制はまだ始まったばかり。これからの発展が大いに期待される!

試飲したワイン
2023 Riesling trocken Gutswein
2023 Kallstadter Saumagen Riesling trocken
2022 Kallstadter Kreidkeller Riesling trocken
2022 Kallstadter Saumagen Riesling trocken H – Fumé
2022 Kallstadter Saumagen Riesling trocken N
2023 Grauburgunder trocken
2023 Weißburgunder trocken
2021 Kallstadter Saumagen Silvaner trocken
2018 Kallstadter Saumagen Riesling trocken H – Fumé
2022 Merlot Réserve trocken
畑面積:20ha
生産量:120,000本/年
上級畑:Kallstadter Saumagen、Kallstadter Kreidkeller、Kallstadter Annaberg、Ungsteiner Weilberg、Ungsteiner Herrenberg
土壌:KS/石灰質粘土・レスレーム、KK/砂質粘土・石灰岩、KA/砂質粘土・風化石灰岩、UW/レスレーム・石灰岩・酸化鉄、UH/レスレーム・石灰岩
栽培種:40%リースリング、15%シュペートブルグンダー、15%ヴァイスブルグンダー、15%グラウブルグンダー、15%その他