Weingut Gebrüder Bertram

2025年8月12日(火)
今年のドイツの旅はアールから。いや、今年もドイツの夏は暑い。アールヴァイラーの街を通り過ぎ、Weingut Gebrüder Bertramがあるデルナウに向かう。この先はアールのワイン街道ともいうべき国道267号線の一本道だ。と、国道の左側を作業用の列車が走っていく。「おー!鉄道復活してんじゃん」思わず叫んだ。2年前に来た時には、鉄道網はズタズタに破壊されており、とても列車が走れるような状態ではなかった。復興が進んでいることが感じられ、嬉しくなる。それでも、洪水の傷跡はまだまだ随所に残っており、完全復旧には時間がかかりそうだ。車は程なくデルナウに差し掛かる。と、左手に「WEINHAUS BERTRAM」の文字が書かれた建物が見えた。ここここと、車を建物の前に滑り込ませた。建物の前には、仮設の建物があった。どうやらそこがヴィノテークのようだ。入り口から入ると、お約束をしたMarkusさんがいた。「やあ、待ってたよ」

Bertram家は、このデルナウの地で長年にわたりワインを造り続けてきた。デルナウにワイン生産者組合が出来たのが1873年。その創設に重要な役割を果たしたのがJohann JosefさんとPeter JosefさんのBertram兄弟。Peter Josefさんは、1901年に亡くなるまで、デルナウワイン生産者組合の初代会長を務めた。それから3年。1904年に、Johann Josefさんの3人の息子、Josef Hubertさん、Matthiasさん、Hubert Josefさんは生産者組合から独立し、 Weingut Gebrüder Bertram(Bertram兄弟醸造所)を設立した。これが今に続くワイナリーの始まりだ。その後、Josef Hubertさんの息子であるWillibaldさんがワイナリーを引き継いだ。Willibaldさんは、現在ワイナリーがある場所に、レストランも備えたWEINHAUS BERTRAMを建設するなど事業を拡大。1973年にはWillibaldさん息子のReinholdさんが事業を引き継ぎ、最新の技術や設備を導入するなど、ワインの質の向上に努めた。そして2005年、ChristianさんとMarkusさんの兄弟が4代目の当主として家業を継承。2人は、環境に配慮したブドウ栽培を貪欲に取り入れてきた。作業は手作業で、農薬は最小限。醸造も非常に丁寧に行われており、人の介入を抑えながら、しっかりと熟成期間が取られている。このような2人のアプローチはワインの品質をぐんぐん高めており、ワイン専門誌でも高く評価されている。

さて、仮設のヴィノテークは狭い空間ではあるが、ワインを陳列する棚と試飲ができるカウンターが程よく収められている。Markusさんはカウンターの向こうに回り、ワインリストを見せてくれる。
「狭いけど、まだ復興途上だからね」
「さっき鉄道が通っているのを見たよ。前に来た時は線路も寸断されていたから大分復活したね」
「そうなんだ。近々デルナウ駅もオープンすると思うよ。で、何を飲む?」
赤ワインに目が行くが、まずは白のブルグンダー種をと思い、ヴァイスブルグンダーをお願いした。うん、フローラルな良い香り。スッキリ辛口でフルーティな味わい。「これは残糖が5g/l、酸度が6g/l。80%をステンレスタンク、20%を樽で醸造しているんだ」なるほど。20%の樽というのが絶妙だなーと思う。次はシュペートブルグンダーのブランドノワールをお願いする。控えめながらしっかりとベリー系の香りがする。ジューシーな果実味が滑らかで美味しい。「これは辛口だけど残糖が高めで8.6g/lなんだ。酸もあるのでそんなに甘さは感じないかもしれないけどね」

と、Markusさんが、「リストには載っていないんだけど、これ飲んでみて」と、ヴァイスブルグンダーとグラウブルグンダーをブレンドしたワインをグラスに注いでくれた。「ヴァイスブルグンダー80%とグラウブルグンダー20%で、4ヶ月木樽で熟成しているんだよ」おー、華やかな香り。ヴァニラのような香りもする。キリッと辛口な濃厚な果実味。いや、美味しい。残糖は0.8g/lとのこと。「あと、新しくリリースしたやつなんだけと、これも試してみて」と、ゼクトを注いでくれた。「これはシュペートブルグンダーのブランドノワール。18ヶ月澱と一緒に熟成してから36ヶ月瓶内2次発酵をしているんだ」きめ細かな泡。ベリー系の香りに酵母の香り。軽やかな味わいが心地良い。これ、10.5%というアルコール度数もあり、まさに食前にピッタリのゼクトだ。
さて、そろそろ赤ワインが飲みたくなってきた。”1904″と名付けられたシュペートブルグンダーをお願いする。「これはね、創業の年が名前になっているんだよ。伝統的なクラシックな醸造をしているんだ」2回使用の木の大樽で9ヶ月熟成しているとのこと。うん、ラズベリー、チェリーの良い香り。凝縮した果実味が滑らか。心地良いタンニン。いや、美味しい。次にMarkusさんが注いでくれたのはFÜ PLASIERと名付けられたキュベ。シュペートブルグンダー75%、フリュブルグンダー10%、ダカーポ5%とのこと。カシス、ブラックベリーの香り。しっかり辛口。タンニンが柔らかに流れる。キュベならではの複雑な味わいが良い。「これは3回目のバリックで17ヶ月熟成しているんだよ」おー、長い熟成期間!この柔らかさはそこから来るのかと思う。

そしてNOVAと名付けられたシュペートブルグンダー。「これはね、2004年に僕たち兄弟が造りはじめたんだ。父のやり方とは違って3回目のバリックで9ヶ月熟成しているんだ」うん、チェリー、ブラックベリー、カシスの良い香り。これにバリックの木の香りがいい感じ。柔らかな口当たり。骨格のある濃厚な果実味。いや、美味しい。「酸は5g/lあるんだ。残糖は1g/lくらいかな。デルナウの畑のブドウだよ。あと、リストにはないけれど、ノイエンアールの畑のブドウから造ったNOVA Rも飲んでみない?」うんうんと頷く。「2023年のブドウで、今飲んだNOVAよりはフレッシュだと思うよ。12月まで、しっかりバリックで熟成しているんだ」あー、いい香り、こちらもブラックベリーなどの香りにしっかりと木の香りが調和している。ヴァニラ、スパイスのニュアンス。ボリューム感がある濃厚な果実味。丸さを感じる。いや、こちらも美味しい。次は、同じくバリックで熟成したフリューブルグンダーをお願いする。「これはデルナウの単一畑ハルトベルクのブドウだよ。2023年は難しい年で、収穫が2週間早くなったんだ。酸度が少し低く、タンニンも穏やかなんだ」うん、ベリー系の良い香り。若い草のような香りが特徴的。柔らかい口当たり。しっかりとした果実味。優しい酸が心地良い。味わいも豊かで美味しい。3回目のバリックで9ヶ月熟成とのこと。

次はいよいよこのワイナリーのプレミアムワイン。まずはデルナウアーハルトベルクのシュペートブルグンダー。おー、これ香りが良い。チェリー、ブラックベリーといった果実の香りに程よいロースト香が調和している。柔らかな口当たり。濃厚な果実味。程よいタンニンが心地良い。「新樽と1回使用(2回目)のバリックで17ヶ月熟成しているんだ。その後、瓶内でもしっかり熟成させているからね」いや、力強いのにエレガントな味わいが素晴らしい。そしてもう一つのプレミアムワイン、デルナウアープファルヴィンゲルトのシュペートブルグンダーを頂く。うん、力強い香り。チェリー、ブラックベリー、カシス。木の香り。そしてスパイス。円やかな舌触り。濃厚で豊かな果実味。穏やかな苦味がコクを与えている。長い余韻。いや、美味しい。「これも17ヶ月バリックで熟成しているんだ。このワインのヴィンテージは2018年だけど、今年リリースする2022年のワイン、飲んでみる?ブドウの出来も良かったし、美味しいと思うよ」おー、それは嬉しい!うん、こちらも力強い良い香り。新しいだけあって、フレッシュ感がある。飲んでみると、これも円やか。濃厚な果実味が美味しい。しっかりしたタンニン。コクがある。まだ若いが、しっかりと熟成されているためか、丸く統一感がある。いや、こちらもホント美味しい。

いや、たくさん飲ませてもらった。すると、「良かったらケラー見てみない?」とMarkusさん。喜んで!とヴィノテークから徒歩数分のケラーに連れて行ってもらう。「まだ洪水の被害から完全復旧とはなっていないけどね」確かに、ケラーの外観はまだ補修中の部分がある。しかし、ケラーの中は、当たり前だがしっかり綺麗に整っていた。アールの皆さんは本当にご苦労されていると思うが、普通にワイン造りが営まれる状況に戻ってきている。
それにしても、Bertram兄弟が造るワイン、いずれも果実味が素晴らしかった。自然な栽培に徹し、しっかりとブドウを完熟させていることが良く分かる。そして、丁寧でしっかりと熟成をさせている醸造も好感が持てる。そのバランスの取れた味わいから、2人の醸造家、ChristianさんとMarkusさん兄弟のコンビネーションはとても良いのだろうなと思う。これからも、Bertram兄弟のワイン、フォローさせていただきます!

試飲したワイン
2023 Weißburgunder trocken
2023 Blanc de Noir trocken
2023 Weiß-/Grauburgunder trocken
2021 Blanc de Noir brut
2022 1904 Spätburgunder trocken
2021 FÜ PLASIER Cuvée trocken
2021 NOVA Spätburgunder trocken
2023 NOVA R Spätburgunder trocken
2023 Dernauer Hardtberg Frühburgunder trocken
2018 Dernauer Hardtberg Spätburgunder trocken
2018 Dernauer Pfarrwingert Spätburgunder trocken
2022 Dernauer Pfarrwingert Spätburgunder trocken
畑面積:4ha
生産量:25,000本/年
上級畑:Dernauer Pfarrwingert、Dernauer Hardtberg、Neuenahrer Sonnenberg、Ahrweiler Daubhaus
土壌:DP/灰色岩・風化粘板岩、DH/風化灰色岩・レスレーム、NS/風化灰色岩・レスレーム、AD/レスレーム・風化灰色岩
栽培種:65%シュペートブルグンダー、10%リースリング、8%フリューブルグンダー、7%ヴァイスブルグンダー、3%グラウブルグンダー、7%その他

