Weingut Nauerth-Gnägy

2024年8月16日(金)
国道48号線をひたすら南下。道路はいつの間にか国道38号線に変わったが、まだまだひたすら南下。目指すWeingut Nauerth-Gnägyがあるシュヴァイゲン=レヒテンバッハ村は、プファルツ最南端のフランス国境近くにある。いくつかの街や村を通り過ぎ、シュヴァイゲン=レヒテンバッハ村に入る直前で側道に入る。周りはブドウ畑。すると、ブドウ畑の中に、シンプルに直方体を組み合わせたような現代的な外観の建物が見えてきた。近づくと、ライトグレイの壁に黄色で「ng.」の文字。いや、カッコいい。周りのブドウ畑が遠くまで見渡せ直線的な地平線が見えるためか、この現代的な建物がとても良く風景に馴染んでいる。車を停め、全面ガラス張りのヴィノテークの横にある扉の呼び鈴を押すと、お約束をしたMareenさんが笑顔で現れた。

Weingut Nauerth-Gnägyは2011年創業。クリンゲンのWeingut NauerthとレヒテンバッハのWeingut Gnägyが統合して発足した。どちらも、永年に渡り高品質のワインを造り続けてきた人気の高いワイナリーだった。が、なぜ統合?それは、Nauerth家のMareenさんとGnägy家のMichaelさんが出会ってしまったから。お二人の結婚を機に、両家円満の合意のもとWeingut Nauerth-Gnägyが誕生した。MareenさんとMichaelさんは、どちらもブドウ栽培とワイン醸造の教育を修了した強者。この2人は、両家の伝統を引き継ぎながらも新しい技術や知見を導入し、ワインの品質を高めている。最初の大仕事は新しいケラーの建設。両家に分散していた醸造の作業を集約すべく、今のワイナリーの場所に新しいケラーが建設された。2013年ヴィンテージから、新しいケラーでワインが生産されている。そして2019年には有機栽培の認証を取得。自然に任せたブドウ栽培を益々徹底させている。2024年には、ケラーの横にモダンな外観の素晴らしいヴィノテークも完成。着々とng.としての道を歩んでいる。

さて、Mareenさんに案内されヴィノテークの中へ。白い壁にライトグレーの床と天井。カウンターや一部の壁が黒に近いグレーでアクセントになっている。いや、モダン。ガラス張りになっている裏手からはレヒテンバッハの街と、その先のフランスまで見渡せる。
「このヴィノテーク、出来たばかりなのよ。先週末にお披露目をしたの」えっ、ということはオープンして1週間しか経っていないってことか。道理でピカピカで真新しい。いや、本当に素敵なヴィノテーク。

Mareenさんはカウンターの後ろに回ると、ワインリストを見せてくれる。ng.1がグーツワイン、ng.2がオルツワイン(村名ワイン)、ng.3がラーゲンワイン(畑名ワイン)と、分かり易く分類されている。ここまで南の地に来ると、ブルグンダー種が気になる。が、リースリングでワインの違いを確認したく、まずはng.1のリースリングをお願いした。うん、柑橘系の良い香り。アプリコットのような香りも。しっかりとした果実味。軽やかで爽快。本当に、毎日飲むのに打ってつけのワインだ。次はng.2のリースリング。あー、良い香り。グレープフルーツに熟したアプリコット、桃。しっかり辛口の凝縮した果実味。シャープな酸。そしてミネラル感。美味しい。「このブドウは石灰岩が入った粘土質土壌のものなのよ。良い葡萄を手摘みで選別しているの。発酵と熟成はステンレスタンクよ」

そしてng.3。お、これ色々な香りがする。柑橘系、アプリコット、桃、それにハーブの香りが特徴的。スパイスのニュアンス。樽からくる木の香りも。飲んでみると、濃厚な果実味。力強い。シャープな酸が骨格をつくる。穏やかな苦味。ミネラル感。果実味と酸が尾を引く長い余韻。いや、美味しい。「これはレヒテンバッハのヘレンヴィンゲルトという畑のブドウよ。重い粘土質土壌で石灰を含んでいるの。使用5、6年くらいのトノー(木の大樽、約900リットル)で自然発酵させ、澱とともに長く熟成。9月か10月頃に仕込んで6月に瓶詰めよ」なるほどー。この味わいが土壌のポテンシャルと醸造から来ていることを実感する。
次はいよいよブルグンダー種。まず、ng.2のヴァイスブルグンダーをお願いする。うん、柑橘系の香りにリンゴ、パイナップル。ジューシーな果実味に穏やかな苦味が良い感じ。優しい酸が心地良い。ステンレスタンクで発酵、醸造。畑の土壌は砂質レームとのこと。そしてng.3のヴァイスブルグンダー。それにしても、同じブドウ種でng.1から3を飲み比べるの、何だか癖になりそう。

あー、これ、香りが立っている。グレープフルーツ、アプリコット、リンゴ。白いお花。ハーブ、スパイスのニュアンス。口に含むと、凝縮した果実味がジューシー。力強さを感じる。穏やかな苦味。果実味が尾を引く長い余韻。「これはトノーとドッペルシュトゥック(木の大樽、約2400リットル)で自然発酵させているの。澱と一緒に長期熟成よ。畑は、シュヴァイゲナー・ゾンネンベルクの一区画のロルヒで、雑色砂岩と砂質レーム土壌よ」自然発酵で、澱と一緒に熟成するやり方は、人が介入しない分、日々しっかり観察をして管理しないと上手くいかない。さっきのリースリングもそうだったが、果実の良い部分を引き出し、むしろクリアでまとまりのあるワインを造っているところが、本当に凄いなと思う。
次はグラウブルグンダー。ng.2をお願いする。うん、良い香り。柑橘系に洋梨。柔らかな口当たり。ジューシーな果実味に良い感じの苦味が調和して美味しい。「これも手摘みで選別したブドウよ。ステンレスタンクで醸造しているの。土壌は砂質粘土と石灰質粘土よ」そしてng.3。あー、これも良い香り。グレープフルーツに、熟した洋梨、メロン。ハーブ、スパイスのニュアンス。飲んでみると、濃厚な果実味。とてもジューシーで力強い。程良い苦味がコクを与える。ミネラル感を感じる。そして長い余韻。「これはトノーで自然発酵よ。そして澱と一緒に長期熟成。畑はレヒテンバッハのプファルヴィンゲルトで、貝殻石灰岩とドロマイトの土壌よ」この香りは完熟した果実と自然酵母による醸造の賜物に違いない。いや。美味しい。

そして、やっぱりシュペートブルグンダーは外せない。最後に、ng.3のシュペートブルグンダーをお願いした。
「これはシュヴァイゲナー・ゾンネンベルクのブドウで造ったのよ。レーム土壌で下部に雑色砂岩が含まれているの」うん、チェリー、ラズベリー、クランベリーの香り。ハーブ、スパイスのニュアンス。木の香り。滑らかな口当たり。凝縮した果実味がジューシー。溶け込んだタンニンが軽やか。しっかりとした味わい。そして長い余韻。いや、美味しい。マセラシオンの後、バリックで20ヶ月以上熟成させているとのこと。全体としてとても調和が取れていて、丁寧に醸造過程を踏んでいることが感じられる。
それにしても、このワイナリーはとにかく明快。まず、味わいが明快。南の地の太陽で完熟したブドウの味わいがストレートに感じられる。次に、コンセプトが明快。ng.1、ng.2、ng.3というカテゴライズのやり方もさることながら、各カテゴリーの醸造方針がハッキリしていて、味わいもそれぞれに良さがある。そして、「ng.」のロゴがシンプルで明快。このロゴからは、Nauerth家とGnägy家の伝統を引き継ぎながらも、新たなワイナリーを創造するんだという決意が感じられる。MareenさんとMichaelさんが築いていくこのワイナリーの未来、しっかりとフォローせねば。

試飲したワイン
2023 Riesling trocken ng.1
2022 Riesling trocken ng.2
2021 Riesling Herrenwingert trocken ng.3
2023 Weißer Burgunder trocken ng.2
2022 Weißer Burgunder Lorch trocken ng.3
2023 Grauer Burgunder trocken ng.2
2022 Grauer Burgunder Pfarrwingert trocken ng.3
2018 Spätburgunder Sonnenberg trocken ng.3
畑面積:29ha
生産量:180,000本/年
上級畑:Schweigen-Rechtenbacher Sonnenberg(LorchとEisenbartの区画を含む)、Schweigen-Rechtenbacher Pfarrwingert、Schweigen-Rechtenbacher Herrenwingert、Klingener Herrenpfad
土壌:SS/雑色砂岩・赤色砂岩・石灰質粘土、SP/貝殻石灰岩・ドロマイト、SH/石灰質粘土、KH/石灰質粘土・砂質粘土
栽培種:16%グラウブルグンダー、15%ヴァイスブルグンダー、15%シュペートブルグンダー、15%リースリング、7%シャルドネ、32%その他
BIO