Hofgut Falkenstein

Johannes Weber von Hofgut Falkenstein
Johannesさん

2019年9月9日(月)
ニーダーメニッヒの街中で車を止め、地図を確認する。目指すHofgut Falkensteinは、住所上はこの地区だが、街から少し離れたところにある。なるほど。ブドウ畑の丘の道を登っていくんだねと確認する。車を発進させ丘の道を登っていくと、ギュン!っと、横の道から一台のバンが飛び出して来た。突然のことで驚いていると、バンの運転席から腕が突き出され、グルグルと振り回してる。何なんこれ!ストレスのやり場がない若者か、などど思っていると、ハンドルを切り左側の側道へ走り去っていった。いやー、びっくりした。すると、グーグルマップを確認していたレーゼが、何だか通り過ぎたみたいと言っている。地図を確認すると、どうやらさっきのバンが入っていった側道の先が目的地のようだった。Uターンし、今度は道を下っていく。すると、さっきのバンが待ち伏せしている。んっ!と思った刹那、また前に着く。そして腕をグルグル。今度は分かる。側道の方に入れと腕で指示している。えー、何で?と思いながら、バンの後をついて側道に入っていく。舗装されていない側道は下り道で、そのうちに建物が見え、バンは駐車スペースに停車した。バンの隣に車を停めると、バンから降りて来たのは当主のErich Weberさんだった。
「どうして僕たちのこと分かったの?」
「下の街で車を見かけたんだよ。ナンバーを見たらこの辺の奴じゃないって分かるだろ。で、ちらっと顔が見えたんだけどアジア人2人じゃん。間違いないって思ったんだよ」と、満面の笑み。
いやー、もう笑うしかない。それにしてもあの腕の振りようは尋常じゃなかった。
「よく来てくれたね。でも俺は用事があるし、息子の方が英語が出来るから、あとは息子が案内するからね」と、建物の方を見やる。向こうから歩いて来ていたのは、共同運営者でケラーマイスターを務める次男坊のJohannesさんだった。
Hofgut Falkensteinは、1981年にErichさんがそれこそゼロからスタートした。1985年、当時は老朽化していた今の建物に移り最初のワインをリリース。建物の修理、改修を進めるとともに、古い地図を調査、優れた区画の畑を徐々に取得してきた。今では9ヘクタールの畑を所有する。Erichさんのやり方はとにかく自然に任せること。Johannesさんもこのやり方を信奉している。化学的な農薬は使用されない。醸造も、果汁をフーダー(モーゼル特有の1000リットルの樽)に入れたらそれっきり。天然酵母による自然発酵が終わっても、瓶詰めするまでそのまま熟成。ワインはずっと澱の上で時を過ごす。そして樽から直接瓶詰め。普通なら発酵の後に澱引きや清澄、濾過のために別の容器に移すところだ。正直、こんなことやってる所、聞いたことがない。また、瓶詰めは樽ごとに行い、同じ畑のワインであっても、違う樽のものがブレンドされることはない。同じ畑でも場所の違いがあり、それを尊重しているからとのことだが、これも前代未聞。Johannesさんは、昔はこれが普通だったんだけどねと言う。
さて、Johannesさんは、周辺の畑を見せてくれたあと、庭のテラスに案内してくれた。コンツの谷が見渡せる。テーブルと椅子があり、腰掛けると、涼しい風が気持ちいい。
「折角来てくれたんだけど、実はワインは全て売り切れなんだ」
「えー!そうなの?」ワイナリーにワインがないってことあるんだと、少しびっくり。
「今日は、ワイナリーに残ってるやつを準備しといたので、是非味見をしてね」と、クーラーボックスからラベルが貼られていない3本のボトルを取り出した。
「最初はこのあたりの畑、Niedermenniger Herrenbergのトロッケンをどうぞ」と、用意してあったグラスに注いでくれる。
あー、酸っぱ!口が窄まる。とても自然な果実味。雑味がなくクリアーな感じ。そして余韻に塩味と何とも言えないミネラル感。それにしても、この自然というか、ナテュラルな感じはすごい。周囲の自然とも相まって、何だか感激する。
次に注いでくれたのは、同じNiedermenniger Herrenbergのファインヘルプ。うん。これも酸っぱいなあ。しかし、残糖から来る甘みといい感じでマッチしている。そして、これもすごいナチュラル感。
「この自然な感じがすごいね」と言うと、「栽培から醸造まで人の手を加えないようにしているんだ。土地や環境の特徴がそのまま反映されるように心がけてる」とJohannesさん。会話の中で、オーストラリアで修行したってことを聞いたので、オーストラリアにも良いリースリングがあるよねって言ってみた。
「いや、ここのリースリングが最高。このように酸が強く、骨格のあるリースリングは他には無いね」
何だか、この土地でワインを造ってることへの誇りのようなものが感じられる。
「では3本目。甘口で、これもこの辺りの特徴があると思うよ」
なるほどー。甘口仕立てでも酸のシャープさが感じられる。ジューシーだわ。そして繊細。加えてまたまた自然な感じ。いや、コンツの谷最高!
それにしても、この土地に根ざした自然なアプローチによるHofgut Falkensteinのワインは唯一無二と思う。今年は売り切れだったが、頑張って毎年買わねば!

Niedermenniger Herrenberg
Niedermenniger Herrenberg、Weber家の猫がいます

試飲したワイン
2018 Niedermenniger Herrenberg Riesling Kabinett trocken
2018 Niedermenniger Herrenberg Riesling Spätlese feinherb
2018 Krettnacher Euchariusberg Riesling Kabinett “Alte Reben”

畑面積:9ha
生産量:36,000本/年
上級畑:Niedermenniger Herrenberg、Niedermenniger Sonnenberg、Krettnacher Altenberg、Krettnacher Euchariusberg
土壌:NH/灰色・赤色粘板岩、NS/灰色・赤色粘板岩、KA/灰色・青色粘板岩・石英・ダイアベース、KE/灰色・青色粘板岩・石英・珪岩を含む砂岩
栽培種:80%リースリング、10%ヴァイスブルグンダー、10%シュペートブルグンダー

ファルケンシュタイン醸造所ホームページ

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