Weingut Quint

2024年8月14日(水)
今日の最初の目的地、Weingut Quintへの道のりは超簡単!なぜなら、宿泊しているホテルから徒歩3分の距離。ゆっくりと朝ご飯を食べてホテルを出る。ここヴィントリッヒ村の真ん中を通るモーゼルワイン通りに出てぶらぶらと歩いていると、もう着いた。グレーの看板にWeingut Quintの文字。通りの角にあり、白い壁の建物の前はオープンスペースになっている。パラソルもあり、イベントなどがあればここにテーブルを出してみんなでワインを飲むんだろうなと想像できる。さて、”ZUR QUINTESSENZ(Quintの真髄へ)”との文字が掲げられた入り口から中に入ると、そこはヴィノテーク。白い壁に明るい色調の木製の棚やテーブル、カウンターがあり、明るい雰囲気。ハローと声をかけると、奥の方からお約束をしたConstantinさんが笑顔で現れた。「やあ、待ってたよ!」

Quint家のワイン造りの歴史は長い。ホームページには「1780年から家族経営」と謳われている。Constantinさんは、ご両親のThomasさんとAngelaさんが運営するワイナリーの経営に2012年から参画。2015年からは、Thomasさんと共同で当主を務めている。そして今は、ケラーマイスターも務めている。奥様のAlinaさんも経営に参画しており、文字通りの家族経営だ。
さて、テーブルに座りワインリストを見せてもらう。おー、種類が豊富!リースリングに加え、ソーヴィニオン・ブラン、シャルドネ、ブルグンダー種の白ワイン。赤ワインも、シュペートブルグンダー、メルローに加え、キュヴェなど。ブラン・ド・ノワールやロゼ、ゼクトもある。これは楽しい。
「色々なワインがあるね」
「お父さんの代からブドウの種類を増やしてきているんだ。栽培面積も増えてきていて、今は10ヘクタールあるんだよ。さて、何を飲む?」

まずは、定番のリースリングをお願いした。「では、ヴィントリッヒのオルツワイン(村名ワイン)をどうぞ」うん、柑橘系に青リンゴの香りがフレッシュ。凝縮された果実味がフルーティ。エレガントなるも、力強さを感じる。心地良い酸味。そしてミネラル感。美味しい。「2023年は雨が多くて涼しかったんだけど、良いワインになったと思うよ」とConstantinさん。
次もオルツワインから、ヴァイスブルグンダーをお願いした。ふむ、これはまた繊細な香り。柑橘系にリンゴ、洋梨、メロン。優しい味わい。穏やかな苦味が良い感じ。程度な酸味。そしてグラウブルグンダー。あー、これ香りが強い。柑橘系の香りに洋梨、桃。ハーブのニュアンス。凝縮した果実味がジューシー。優しくて丸い味わい。程良い苦味。いや、これ好きかも。

ブルグンダー種を飲んだら、何だかシャルドネが気になった。折角なので良いものをと思い、ラーゲンワイン(畑名ワイン)のシャルドネをお願いした。「これはヴィンテージが2020年のワインだよ。2、3回使用のバリックで12ヶ月熟成しているんだ」うん、パイナップル、マンゴーなど、しっかりとした果実の香り。花の香り。スパイス、木の香り。まろやかな舌触り。ドライで濃厚な果実味。力強さを感じる。そして長い余韻。いや、美味しい。するとConstantinさんが「リストにないけど、2023年のシャルドネも飲んでみない?実は1週間前に瓶詰めしたばかりで、まだラベルも貼ってないんだけどね。比べてみるのも面白いよ」と嬉しいオファー。うんうんと頷くと、奥からラベルのない瓶を持ってきてくれた。「これは1回使用のバリックで9ヶ月熟成だよ」あー、トロピカルなフルーツの香りが良い。白い花の香りも。ヴァニラ、木の香りにスパイスのニュアンス。まろやかな舌触り。凝縮した果実味がフレッシュで活き活きとしている。濃厚な味わい。そして長い余韻。いや、比べてみると違うなぁ。個人的には数年置いておいた落ち着いた美味しさが好きだが、この瓶詰め直後のフレッシュ感もなかなか良い。

「では、ラーゲンワインのリースリングをどうぞ。畑は粘板岩土壌のヴィントリッヒャー・グローサー・ヘルゴットだよ」と、注いでくれたは”Quintessenz”と名付けられたワイン。おー、ここで”Quintの真髄”が登場。うん、グレープフルーツ、ライムといった柑橘系の良い香り。青リンゴ、桃の香りも。ハーブ、石灰のニュアンス。ドライな味わいの凝縮した果実味がジューシー。活き活きとした酸が骨格を作っている。そしてミネラル感がある。長い余韻。いや、美味しい。「このワインは自然発酵で、10ヶ月澱とともに熟成させているんだ」なるほどー。何というか、果実味に旨味というかコクを与えているのはそのような醸造の賜物かもしれない。

「これも良い畑のワインだよ。ヴィントリッヒャー・オーリヒスベルクのリースリングをどうぞ。灰色粘板岩土壌で、力強くミネラル感があるワインが出来るんだ。これも自然発酵でしっかりと澱と一緒に熟成させているんだよ」おー、これ香りが強い。グレープフルーツ、ライム、洋梨、桃に白い花の香り。ハーブのニュアンス。これも濃厚でジューシーな味わい。酸と果実味のバランスがとても良い。長い余韻にミネラル感。
ところで、このラベル、”Hochzeitsweine(結婚式のワイン)”と記されており、Constantinさんの写真がプリントされている。
「これ、どういうこと?」
「ハハ、これは僕が結婚した時に造ったワインなんだよね。ちなみに妻のもあるよ。一緒にブドウを栽培し、僕のは辛口、妻のは甘口に仕上げたんだ」と、奥さまのAlinaさんの写真がプリントされたラベルのワインも見せてくれた。いや、これ良いな。何だか飲んでるこっちも幸せを分けてもらってる気分。

さて、次は気になっていた赤ワイン、その名も”Cuvée Constantin No.1″をお願いした。「これはね、メルロー60%、カベルネ・ミトス30%、シュペートブルグンダー10%のキュベなんだ。バリックで2年間熟成させているよ」うん、ブラックベリー、ブルーベリー、チェリー、カシスの香り。ヴァニラ、木の香り。ベリーを煮詰めたようなジャムのような香りも。熟した果実味が濃厚。深みを感じる味わい。「ゆっくりと優しく瓶詰めしており、濾過はしていないんだよ」へー、グラスのワインはとても澄んでいるように見える。細心の注意を払って瓶詰めしているに違いない。
「では、こちらのキュベも飲んでみて」とConstantinさんが注いでくれたのは”Cuvée „R“ Réserve”という名の赤ワイン。「これはカベルネ・ミトス50%、シュペートブルグンダー25%、メルロー25%なんだ。カベルネ・ミトスが2017年、シュペートブルグンダーが2018年、メルローが2018年のブドウだよ」

なるほど、それでこのワインはノンヴィンテージなんだと分かる。「あと、これはバリックで3年間の熟成、そしてこれも濾過なしだよ」あー、これも果実の香りが良い。ブラックチェリー、ブルーベリー、カシス。木の香り。とても円やかな口当たり。凝縮された果実味がジューシー。穏やかな苦味。溶け込んだタンニンを感じる。濃厚なるも円やかな味わい。いや、美味しい。
ここまで試飲して感じるのは、どのワインも明確な個性を発揮しているということ。とても丁寧にブドウを栽培していることは勿論、ブドウの個性を引き出す醸造がなされているんだなと思う。多様な品種のブドウで多様なワインを造っているが、キュベのワインも含め、どのワインもしっかりとした方向性を持っており、まとまっている。これは、ケラーマイスターであるConstantinさんのセンスと技量によるところが大きいと思うが、凄いことだ。すでに四半世紀近くの家族経営の伝統を持つこのワイナリー、まさに黄金時代を迎えようとしているのかも。

試飲したワイン
2023 Wintricher Riesling trocken
2023 Weißburgunder trocken
2023 Grauburgunder trocken
2020 Chardonnay trocken, im Barrique gereift
2023 Chardonnay trocken, im Barrique gereift
2022 Quintessenz Riesling trocken, Wintricher Großer Herrgott
2021 Riesling trocken, Wintricher Ohligsberg
2019 Cuvée Constantin No. 1 trocken, im Barrique gereift
NV Cuvée „R“ Réserve trocken, im Barrique gereift
畑面積:10ha
生産量: ー
上級畑:Wintricher Ohligsberg、Wintricher Großer Herrgott
土壌:WO/灰色粘板岩、WGH/粘板岩
栽培種:リースリング、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、ソーヴィニオン・ブラン、シャルドネ、シュペートブルグンダー、メルロー、カベルネ・ミトス、その他