ausJ:熊本ワイン Kumamoto Wine

Ms. Kawabata, Kumamoto Wine
フードパルショップ店長の川端さん

2020年12月18日(金)
熊本駅からJR在来線で北に向かい10分ほど、3駅目の西里駅で下車。学生さんが多いと思っていたら、駅の裏手に熊本保健科学大学の校舎があった。周囲は、ほぼほぼ田んぼ地帯。保健科学大学を横目に見ながら、その先にある丘に向かって歩く。超のどか。坂道を登ること15分、丘の中腹にあるフードパル熊本に到着。パン屋さんやお菓子屋さん、蜂蜜屋さんなどが並び、食品の販売だけでなく、パン造り体験や工場見学をやっている。普段なら小学生が体験学習などで来てるんだろうが、コロナの影響か、また、平日ということもあり、人がいない…。歩いていくと、黄色い壁にオレンジ色の屋根、コロニアルっぽい感じの建物が見えた。熊本初のワイナリー「熊本ワイン」だ。
熊本ワインは、1999年、南九州コカ・コーラボトリング社の子会社として設立された。南九州コカ社は、マルス山梨ワイナリーを運営する本坊グループの企業。1990年には山形の高畠ワインも設立しており、改めて本坊グループの日本ワイン界への貢献の大きさを感じる。その後、日本国内のコカ・コーラ社の再編が進む中、熊本ワインは2011年に独立し、今に至っている。
熊本で栽培したブドウでワインを造ることを目的に設立された熊本ワインだったが、熊本のブドウ栽培は食用がメイン。最初の醸造は、巨峰とマスカットベーリーAから始まった。こんな中、熊本ワインの後押しとなったのが山鹿市の農地転作事業だ。山鹿市菊鹿町が、ワインを造りたいと名乗り出た。当時製造を担当していた現社長の幸山さんが現地に行ってみると、綺麗に赤く発色したサルビアが咲いていた。こんな色が出るってことは、日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きいに違いない。きっと良いブドウが育つと考えたそうだ。こんな訳で、創業の年、菊鹿町の3件の農家さんと、シャルドネの苗木650本を植えることになった。菊鹿シャルドネの始まりだ。
とはいえ、美味しいワインはそう簡単には造れない。モーゼルの生産者さんも、植えてから5年は経たないと良いワインは出来ないと言っていた。幸山さんも、メディアの取材に、納得がいくものができるようになったのは2008年からと答えている。ところが、その2008年ヴィンテージの菊鹿シャルドネ・ナイトハーベストが凄かった。なんと、ジャパン・ワイン・チャレンジ2009で最優秀新世界白ワイントロフィーを受賞。熊本ワインの評価が一気に高まった。今や、契約農家は30件、栽培面積も当初の3倍の9haとなった。そして、菊鹿シャルドネのみならず、他のワインも日本国内のワインコンクールで受賞を重ねている。

さて、天井が高く明るい店内に入ると、手前に県産品を使ったピクルスなどの食品やグッズがある。その奥がワインコーナー。壁一面に並べられたワインが壮観だ。棚には、菊鹿シャルドネ、ナイアガラやデラウェアなどの白ワイン、キャンベルアーリーやマスカットベーリーAなどの赤ワイン、巨峰やキャンベルアーリーのスパークリングワインなど、充実のラインナップ。評価が高い菊鹿シャルドネ樽熟成は残念ながら売り切れ。そして、右手にある試飲コーナーに足を進める。店長の川端さんがお相手をしてくれた。
まずは熊本ワインの代名詞、菊鹿シャルドネ。リンゴや洋ナシの香り。口に含むと、程よい酸味を伴ったしっかりとした果実味。フレッシュさを感じる。なんというか、まっすぐな味わいが印象的。
「2018年の樽熟成したワインと2019年のステンレス発酵のワインをブレンドしています。時間が経つと、樽の香りも感じられますよ」と川端さん。なるほど、スッキリ真っ直ぐだけど、単純ではない味わいはそこにあるのかなと思う。
次は菊鹿シャルドネ樽熟成。やや濃いめのレモンイエロー。果実の香りに加え、しっかりとした木の香り、ヴァニラの香りがする。飲んでみるとまろやかな舌触り。しっかりとした濃厚な果実味。いや、美味い。後味の苦味もいい感じ。発酵後、フレンチオークの樽で1年間熟成しているとのこと。これ、次のヴィンテージは売り切れる前に買わねば。

菊鹿カベルネクレーレは、カベルネソーヴィニヨン100%のロゼだ。特徴的なハーブの香りに、ベリーやカシスの香り。スッとする木の香りも。フレッシュで軽やかな味わい。後味の程よい渋みがいい感じに効いている。
「私はこのブドウの赤ワインが好きなんですが、ロゼもいいですよ。これも樽熟成しており、樽由来の香りも楽しめます」
次は赤ワイン。菊鹿メルロ樽熟成2018年。あー、これも良い感じの樽香。ブルーベリー、カシスの香り。フレッシュな果実味に軽快なタンニンが心地良い。真っ直ぐな果実味が特徴的。そして深みも感じられる。何というか、この真っ直ぐ感が熊本ワインの特徴かなと思う。そんな感想を川端さんに伝えると、
「そうなんですよ。うちのワインは味筋がキレイなんです。色々なワインを飲みますが、うちのは本当にキレイ」と即答。
なるほど。このスッキリ真っ直ぐな果実味は、確かにキレイって表現がピッタリくる。うん、熊本ワインはキレイ!
試飲の後、醸造施設と樽熟成室を見せていただいた。優しい圧搾ときっちり温度管理された発酵と熟成が、あのキレイな味筋を作るんだろうなと実感する。
ところで、2019年、熊本ワインは菊鹿町に1.5haの自社畑を拓き栽培を開始するとともに、新しく菊鹿ワイナリー(菊鹿醸造所)を開設。また、これに当たり、栽培・醸造を担う農業生産法人「熊本ワインファーム」を設立し、熊本ワインは販売を担う会社となった。ワイン造りのノウハウを蓄積し、満を持して大きく一歩を踏み出した形だ。2020年には、フランスのChardonnay du Mondeで菊鹿シャルドネ樽熟成2017がシルバーメダルを受賞。国際的にも認知度を高めつつある。熊本ワインの今後の展開、本当に楽しみ!

試飲したワイン
NV 菊鹿シャルドネ
2018 菊鹿シャルドネ樽熟成
2018 菊鹿カベルネクレーレ
2018 菊鹿メルロ樽熟成

畑面積:10.5ha(契約畑9ha、自社畑1.5ha)
生産量: −
上級畑:山鹿市菊鹿町
土壌:花崗岩、砂壌土、粘土
栽培種:
自社畑/シャルドネ、ゲベルツトラミネール、ビオニエ、ピノ・ノワール、メルロ、カベルネ・フラン、ガメイ
契約農家/シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ
買いブドウ/マスカットベーリーA、デラウェア、キャンベルアーリー、ナイアガラ、巨峰

熊本ワインホームページ

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