Weingut Carl Ehrhard

Weingut Carl Ehrhard
辛口番長、Carlさん

2019年9月10日(火)
リューデスハイムの街のど真ん中。ガイゼンハイマー通りは車の往来が激しい。あっ!と思った瞬間、Carl Ehrhardの建物は過ぎ去った。この交通量の中うまく車を停めるのは至難の技。気を取り直し、ぐるっと回ってきて、今度は入り口前のスペースに車を乗り入れた。車を降りると、待っていてくれたのか、当主のCarlさんが入り口から顔を出し出迎えてくれた。いや、ありがたや。実はこの日は休業日だったのに、我々のアポを快く受け入れていただいた。やりとりをしていた奥様のPetraさんが、上手いことCarlさんにお願いしてくれたおかげだと思う。さて、中に入ると、そこはクラシックな趣のヴィノテーク。渋いエンジ色の壁にちょっと濃いめの色調の調度類。いい雰囲気。
Carl Ehrhardは1884年創業。CarlさんとPetraさんは、1998年にこのワイナリーを引き継いだ。今のワイナリーを大きく特徴付けているのは、何と言ってもテロワールへのこだわりだ。ドイツのブドウ畑は元来とても細かく区分されていたが、1971年のワイン法でスッキリと大括りされた。Carl Ehrhardはリューデスハイム周辺の6つの畑に自社の栽培区画を持っているが、同じ畑内でも昔の区分に従って栽培と醸造を分けている。場所毎のテロワールの違いを大事にした結果だ。この昔の畑名はUrstückで表記される。そして、もう一つのこだわりは自然に任せたワイン造り。ブドウの栽培は勿論、醸造へのこだわりが凄い。特に畑名ワインは、発酵から瓶詰めまで、シュトゥック(ラインガウ特有の1200リットルの大樽)に果汁を入れたらあとは何もしない!天然酵母による自然発酵。まあここまではよくある。この後、普通なら澱引きするところであるが放置。そのまま熟成させ、最後の最後、瓶詰めの前に1回濾過をするだけ。「ワインは澱の上で長い時間、静かに静かに休むことができる。この静かさがテロワールの特徴を引き出すんだよ」とCarlさんは言う。うーん、これって前代未聞的に凄いけど、たまたま前日訪ねたFalkensteinも、同じ様なことを言ってたなと思う(→ファルケンシュタイン醸造所訪問記)。
「で、どんなワインが好きなの?」
「もちろんトロッケン」
後から思えば、この一言が効いた。実は、Carlさんの更なるこだわりは、トロッケンにあった。
「では、まずは基本のグーツワインね。これはシュトゥックだけでなくステンレスタンクも使ってるんだ」
おー!辛い。でもいい感じの果実味。活気がある酸にミネラル感。美味い。「骨格がしっかりしていて辛いね」と言うと、Carlさんは笑顔で聞いている。次のカビネトロッケンも同様。樽による特有の仕込みのためか、様々な味わいが感じられる。バナナを思わせるイーストの香りと木のニュアンスがあり、舌触りが丸い。
「これは少し甘いかな」と、Urstück „Backhaus“。あー、確かに甘い。しかし、紛れもない辛口で、むしろこれが普通な感じ。強い酸味と果実味が良いバランスで、素直に美味しい。
「これから上級畑のやつに行くからね」と、Urstück „Kuhweg“。熟した桃のような果実の香りに、木の香りがする。口に含むと、おー、辛っ!これはなかなか。
「普通の辛口とは全然違う。こりゃウルトラトロッケンだね!」
「俺は偉大な辛口ワインを造りたいんだ。自然に任せたらこうなった。テロワールの特徴も出てると思うよ」とCarlさん。このKuhwegの残糖値は1.8グラム/リットル。かなり低い。極辛ではあるが、ボリューム感のある果実味に、何と言っても丸い口当たりが美味しい。
そして極め付きはUrstück „Unterer Platz“。なんと0.7グラム/リットル!なんだか、辛口のイメージが変わった。確かに濃密なリースリング特有の果実味があり、レモンのような酸っぱさがあったかと思えば、味わうほどにメロンや桃、リンゴと言った様々なニュアンスが感じられる。しかし、甘さがないので印象が普段飲むリースリングとはまるで違う。樽からくる木の香りと、角が取れた丸い口当たりと相まって、とても上質なお酒を飲んでいる感じ。
「これ、なんだか凄いね」
「いいだろ!俺にとっては残糖0.3グラム(1リットル当たり)あったって甘すぎるくらいだ」とCarlさんは大声で笑う。いやいや、0.3はさすがに冗談だろうが、Carlさんのワインは概ね残糖3グラム以下だ。
その後、Wilgert、RottlandとUrstückを飲み進める。いずれも辛口、まろやかなこのシリーズに一貫した味わいがある。Wilgertはハーブの香りが特徴的でより柔らかく、Rottlandはよりジューシーで柑橘系の香りもする。いずれも様々な味わいを感じるが、確かに違いがある。これがテロワールの違いなんだろうなと思う。
「シュペートブルグンダーも少し造っているので、飲んでみて」と、ロゼと赤をいただいた。いや、これも辛っ!でも旨っ!何だか宴会みたいになってきた。「他にはどこのワイナリー行ったの?」と聞かれたので、いくつか名前をあげると、「おー!ファルケンシュタインの親父とは2日前の仕事で一緒だったんだよ。本当にいい奴なんだよ!」
なるほど。ここでファルケンと繋がった。確かに、あの腕グルグルのお父さんとCarlさんは気が合いそうだ。
ところで、その後発売された2020年版VINUMを開いてびっくりした。今年の躍進者賞にCarlさんが選ばれ、巻頭カラーページににこやかな笑顔の大きな写真が掲載されている。いや、辛口ドイツワインの大きな波が来るかもしれない!

試飲したワイン
2018 Riesling trocken
2018 Riesling Kabinett trocken
2016 Klosterlay Riesling Urstück „Backhaus“
2017 Bischofsberg Riesling Urstück „Kuhweg“
2017 Berg Roseneck Riesling Urstück „Ramstein“
2107 Berg Roseneck Riesling Urstück „Unterer Platz“
2017 Berg Rottland Riesling Urstück „Wilgert“
2017 Berg Rottland Riesling Urstück „Rottland“
2018 Rosé vom Spätburgunder trocken
2016 Berg Roseneck Spätburgunder trocken

畑面積:8ha
生産量:50,000本/年
上級畑:Rüdesheimer Berg Rottland、Berg Roseneck、Bischofsberg、Kirchenpfad、Klosterberg、Klosterlay
土壌:BRott/灰色粘板岩・珪岩・砂利・黄土(レス)、BRose/(東側上部)黄土(レス)・ローム、(西側下部)珪岩、Bis/堆積岩と石灰質の岩盤に石や砂利を含んだ黄土(レス)、Kir/珪岩・黄土(レス)、Klosterberg/砂岩・珪岩、Klosterlay/石灰を含む黄土(レス)で一部に珪岩が見られる
栽培種:85%リースリング、14%シュペートブルグンダー、グラウブルグンダー1%

カール・エアハールト醸造所ホームページ

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